家賃は、本当に手取りの3分の1までがいいの?
渡邉 拓也
家賃の予算は、目安の割合に頼りたくなりますよね。ご自身の数字で上限を出す引き算のやり方を書きました。
目次
お客様
家賃は手取りの3分の1までと聞いたので、このくらいで探しています。
お部屋探しのご相談で予算をうかがうと、こうしたお答えをよくいただきます。誰もが一度は耳にしたことのある目安です。
私たちは、この目安をそのままお勧めしていません。外れているから、というより、人によって合う・合わないの差が大きすぎるからです。手取りが同じでも、毎月の固定費や貯金の目標が違えば、無理のない家賃も変わります。
この記事では、「3分の1」の出どころと手取りの中身、実際の家計の家賃を確かめます。そのうえで、私たちが予算の相談でうかがっていることを紹介します。
「手取りの3分の1」には、決まった根拠があるの?
担当・渡邉
少なくとも私たちが調べた範囲では、この割合を基準に示した公的な資料は見つかりませんでした。
「家賃は手取りの3分の1まで」について、国や業界団体が定めた資料を探してみた結果です。広く知られてはいるものの、言い伝えに近い目安だと考えています。
公的な家賃の決め方は、まったく別の考え方によるものです。たとえば公営住宅の家賃は、まず入居する人の収入の区分ごとに基礎額が決まっています。そこに、立地や広さ、建ってからの年数などの係数を掛けて決める仕組みです。収入に何割を掛ける、という方式ではありません。
入居審査で年収と家賃の割合を見る、という話もよく聞きます。ただ、その基準も審査をする会社ごとのもので、公的に決まった数字ではありません。「3分の1」を、守らなければならない線のように考える必要はないわけです。
手取りは、額面からどのくらい減るの?
担当・渡邉
家計調査をもとに計算すると、額面の2割ほどが税金や保険料として引かれています。
「手取り」は、給与の額面から税金や社会保険料が引かれた後の額です。会社員の場合、引かれるものの多くは次のとおりです。
- 厚生年金の保険料:保険料率18.3%を、会社と本人で半分ずつ負担します
- 健康保険の保険料:協会けんぽの東京都の料率は2026年度で9.85%で、これも半分ずつです
- 介護保険の保険料:40歳から64歳の方は、料率1.62%が加わります
- 子ども・子育て支援金:2026年4月分から、料率0.23%が加わりました
- 雇用保険の保険料:2026年度は、本人の負担が給与の1,000分の5です
- 所得税と住民税
総務省の家計調査(2025年平均)で、勤労者世帯の可処分所得を実収入で割ってみました。単身の世帯で約81%、二人以上の世帯でも約81%です。おおまかに言えば、額面の2割ほどが税金や保険料として引かれている計算になります。
この差は、年齢や扶養の有無、住んでいる自治体で変わります。住民税は前の年の所得をもとに決まるので、働き始めて2年目に手取りが減ったと感じる方もいます。
お客様
働き始めて2年目なんですが、手取りが減った気がするんです。
担当・渡邉
気になりますよね。住民税の決まり方のせいで、2年目にそう感じる方もいます。
お客様
そういうことだったんですね。予算は、どこから考えればいいですか?
担当・渡邉
結論から言うと、給与明細の「差引支給額」からです。割合の目安より先に、その数字を見てください。
賞与がある方も、毎月の家賃は月々の手取りでまかなえる額にしておくのが安全です。賞与の額は、会社の業績などで変わることがあるからです。
実際の家計では、家賃にどのくらい払っているの?
担当・渡邉
平均では手取りの3分の1より低い水準ですが、収入が低いほど家賃は重くなります。
家計調査には、住居費の平均が載っています。ただ、調査の「住居」や「家賃地代」の平均は、持ち家で家賃を払っていない世帯も含めた平均です。賃貸の家賃を知りたいときは、民営の借家に住む世帯に絞った数字を見てください。
民営の借家に住む世帯に絞ると、1か月の家賃地代の平均は次のとおりです。
二人以上の勤労者世帯では、家賃地代は可処分所得の約14%にあたります。単身世帯では、毎月の消費支出のうち約26%が家賃地代です。どちらも、手取りの3分の1よりは低い水準で暮らしている世帯が多い、ということになります。
一方、内閣府の分析では、民営借家に住む年収200万〜300万円の世帯の数字が示されています。年収に占める賃料の割合は、全国で約25%、東京都で約33%でした。こちらは手取りではなく、年収に対する割合です。収入が低いほど、家賃の重さは増していきます。平均の数字だけで「まだ余裕がある」とは言い切れません。
予算の相談では、手取りのほかに何を見るの?
担当・渡邉
毎月決まって出ていくお金と、暮らし方をうかがっています。
決まって出ていくお金は、家賃と同じように簡単には減らせないからです。たとえば、次のようなお金です。
- 奨学金やローンの返済
- スマートフォンや通信、各種の定額サービス
- 車を持っている場合の駐車場代や保険料
- 毎月の貯金や積み立ての目標額
- 実家への仕送りなど、ご家族に関わる出費
家賃の側も、管理費や共益費を足して考えてください。名前は違っても、毎月払うお金としては同じです。家賃だけの数字で並べると、管理費の高い部屋が実際より安く見えてしまいます。2年ごとの更新料がかかる地域なら、それも月割りにして足すと、実際の負担に近づきます。
暮らし方も大事な材料です。在宅で働く時間が長い方は、部屋の広さや日当たりにお金をかける価値が上がります。反対に、平日はほとんど家にいない方なら、家賃を抑えて趣味や貯金に回すほうが満足しやすいこともあります。
私たちは、家賃を抑えることだけを勧めているわけではありません。家賃を上げることで、ほかの出費や時間が減る場面もあるからです。駅や職場に近い部屋にすると、毎日の移動の時間が短くなります。自転車で通えるようになれば、交通費がかからなくなる方もいます。宅配ボックスやオートロックがあることで、安心して暮らせる方もいるでしょう。家賃の数字だけでなく、その部屋で何が手に入るかを並べてみると、選び方が変わってきます。
お客様
家賃は低いほうがいいと思って、駅から遠い部屋ばかり見ていました。
担当・渡邉
抑えたい気持ち、分かります。ただ、家賃を上げると、移動の時間や交通費が減る場面もあるんです。
お客様
そうなんですね。上げるかどうかは、どう決めればいいですか?
担当・渡邉
何のために上げるのかを、先に言葉にしてみてください。
大事なのは、上げる理由がはっきりしていることです。「なんとなく広いほうがいい」で上げた家賃は、あとで重く感じやすいものです。
結局、家賃の上限はどう決めればいい?
担当・渡邉
割合を掛けるのではなく、手取りから引き算をして上限を出します。
これが、私たちがお勧めしている決め方です。まず、手取りから毎月の固定費と貯金の目標額を引きます。次に、食費や日用品、交際費など、暮らしにかかるお金を引きます。最後に残った額が、管理費込みで払える家賃の上限です。
例として、手取り24万円の方で考えてみます。固定費が3万円、貯金の目標が3万円、暮らしにかかるお金が10万円なら、残りは8万円です。この方にとっては、手取りの3分の1と同じ額でも、余裕はほとんどありません。もし貯金の目標を5万円にしたいなら、上限は6万円まで下がります。
引っ越しのときには、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用もかかります。月々の家賃の上限とは別に、手元にいくら残しておくかも決めておくと安心です。
家賃は、割合より引き算で。
引き算で出した上限は、少し窮屈に感じるかもしれません。それでも、入居してから毎月苦しくなるより、最初に分かっていたほうがずっと楽です。私たちと一緒に、ご自身の数字で一度計算してみてください。紙とペンがあれば、10分ほどで出せる計算です。
よくある質問
管理費や共益費も、家賃に含めて考えますか?
含めて考えてください。名前は違っても、毎月払うお金としては同じです。
賞与があれば、家賃を上げてもいいですか?
毎月の家賃は、月々の手取りでまかなえる額にしておくのが安全です。賞与の額は、会社の業績などで変わることがあります。
更新料は、どう考えればいいですか?
2年ごとの更新料がかかる地域なら、月割りにして家賃に足してください。実際の負担に近い数字で比べられます。



