初期費用は「家賃の何か月分」と考えていいの?
八木澤 竜也
見積もりの額が思っていたのと違うと、戸惑いますよね。項目ごとに何のお金かと、相談できる所を書きました。
お客様
家賃の何か月分くらいと思っていたのに、見積もりの額が合いません。
部屋探しのご相談の中で、こうしたお話を伺うことがあります。初期費用は「家賃の◯か月分くらい」と言われることが多く、探し始めの目安には便利な言い方です。
ただ、初期費用は性質の違うお金の集まりなので、月数だけでは見積もりとずれます。この記事では、内訳ごとに何のお金か、どこを確かめて何を相談できるかをまとめました。
「家賃の何か月分」では、なぜずれるの?
担当・八木澤
項目そのものが物件ごとに違い、家賃と関係なく決まる費用もあるからです。
ずれる理由は3つあります。1つ目は、項目そのものが物件ごとに違うことです。敷金も礼金もかからない物件があれば、どちらも2か月分の物件もあります。同じ家賃の部屋どうしでも、ここだけで数か月分の差がつきます。
2つ目は、家賃と連動しない費用があることです。火災保険料や鍵交換の費用は、保険の商品や物件ごとに決まります。保証料も、会社やプランで計算のしかたが違います。決まった額の費用は、家賃が安い部屋ほど「何か月分」に直したときの割合が大きくなります。
3つ目は、入居日によって最初に払う家賃が変わることです。月の途中から入るなら、その月は日数で割った「日割り家賃」を払うことがあります。契約によっては翌月分も先に払うので、入居日が月末に近いと最初にほぼ2か月分を払うこともあります。
項目が物件ごとに違うことは、統計にも出ています。国交省の「住宅市場動向調査」は、三大都市圏で民間の賃貸住宅に入居した世帯に、入居時の費用を聞いています。
- 図は、入居時にその費用があった世帯の割合
- 対象は、2023年4月から2024年3月に入居した584世帯
- 割合は、無回答を含めた全体に対するもの
- 「敷金」は、調査の「敷金/保証金」の項目
どれも半分前後で、かからないケースも珍しくありません。礼金と仲介手数料は、「あった」と答えた世帯のほうが少数でした。
礼金があった世帯は、首都圏で49.0%、中京圏で20.0%、近畿圏で41.9%と、地域でも差がありました。月数を答えた世帯では、敷金・礼金とも「1か月ちょうど」が最も多くなっています。
それぞれの項目は、何のお金なの?
担当・八木澤
貸主に預けて残りが返るお金と、払ったら返らないお金が混ざっています。
同じ名前でも扱いは契約で違うことがあるので、下の表は目安として見てください。
| 項目 | 何のお金か | 退去時に返るか |
|---|---|---|
| 敷金・保証金 | 家賃の未払いなどに備えて貸主に預けるお金 | 差し引き後の残りが返る |
| 礼金 | 貸主に払うお金 | 返らない |
| 仲介手数料 | 部屋を紹介し契約を仲立ちした不動産会社への報酬 | 返らない |
| 前家賃・日割り家賃 | 入居する月(と翌月)の家賃の前払い | 家賃そのもの |
| 保証料 | 家賃の支払いを保証会社に保証してもらう費用 | 保証会社の契約による |
| 火災保険料 | 部屋や家財の損害などに備える保険の料金 | 保険の契約による |
| 鍵交換費用 | 前の入居者から鍵を替えるための費用 | 返らない |
敷金は、民法に定めがあります。家賃など借りる人が負う金銭の債務を担保するため、貸主に預けるお金です。契約が終わって部屋を返したときに、未払い分などを差し引いた残りを返すことになっています。
保証会社の利用を、契約の条件にしている物件もあります。国交省には家賃債務保証業者の登録制度があり、登録した会社は国交省のサイトで確かめられます。ただし任意の登録制度なので、登録していない会社も営業はできます。更新のときの費用も、保証会社の契約しだいです。
鍵の交換は、退去時の費用分担を示した国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に考え方があります。破損や紛失のない鍵の取替えは、入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題とされ、貸主の負担とするのが妥当という整理です。ただしガイドラインに法的な拘束力はなく、契約で借りる人の負担と決めている場合もあります。
仲介手数料には、上限があるの?
担当・八木澤
上限は告示で決まっていて、承諾がなければ借りる人の分は家賃の0.55倍までです。
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法46条にもとづく国交省の告示で決められています。「報酬額の告示」と呼ばれるもので、不動産会社はこの額を超えて報酬を受け取れません。
住まいとして借りる部屋の決まりは、2段構えです。まず、貸主と借主の双方から受け取る合計は、家賃1か月分の1.1倍以内です。そのうえで、借主など依頼者の一方から受け取れる額は、原則として家賃の0.55倍以内とされています。
例外は、仲介の依頼を受けるにあたって、その依頼者の承諾を得ている場合です。このときは一方から0.55倍を超えて受け取れます。ただし、双方の合計が1.1倍以内という枠は変わりません。
1.1倍や0.55倍は、消費税を含めた数字です。告示は、報酬の額に消費税分を含め、もとにする家賃には消費税を含めないと定めています。たとえば家賃8万円なら、合計の上限は8万8,000円です。承諾がない場合に借主が払う上限は、4万4,000円になります。
国交省は、報酬の額は媒介(仲介)の契約を結ぶ際にあらかじめ説明し、合意しておく必要があるという考え方を示しています。
お客様
仲介手数料が、家賃1か月分に税を足した額でした。払うものなんですか?
担当・八木澤
気になりますよね。承諾がなければ、借りる人の分は0.55倍までです。
お客様
申し込みのときに、何か説明があった気がします…。
担当・八木澤
事前に説明を受けて承諾したか、振り返ってみてください。
見積もりのどこを、相談すればいいの?
担当・八木澤
お金の性質から見通しを立て、必須の項目と選べる項目を分けてもらいます。
初期費用を下げる相談ができるかは、物件や時期、貸主の考え方しだいで、一概には言えません。それでも、お金の性質を見ると、おおまかな見通しは立てられます。
礼金のように貸主が条件として決めている項目は、相談の余地が出ることがあります。空室の期間が長い部屋では、貸主が条件を見直すこともあります。ただし決めるのは貸主なので、相談すれば必ず下がるものではありません。
保証料や火災保険料は、保証会社や保険の商品で決まるので、金額を下げてもらうのは難しいことが多いです。そのかわり、別の保証会社やほかの保険を選べるかを聞く余地はあります。選べるかどうかは、物件ごとに違います。
鍵交換や室内の清掃など名目のある費用は、なぜ借りる人の負担なのかを聞いてみてください。加入が任意のサービスが入っていれば、外せるかも確かめましょう。
お客様
初期費用が思ったより高くて…。値下げをお願いしてもいいんでしょうか?
担当・八木澤
言い出しにくいですよね。僕は、値下げの前に中身を分けてもらうようすすめています。
お客様
お願いする前に、なんですね。どう聞けばいいですか?
担当・八木澤
「この中で、必須の項目と選べる項目を分けて教えてください」と聞いてみてください。何を相談すればいいかがはっきりします。
見積もりは合計額だけで判断せず、次の点を1行ずつ確かめます。
- 敷金と礼金の月数と、敷金が返るときの条件
- 前家賃が何月分までか、日割りの計算が入居日と合っているか
- 管理費・共益費が前払いに含まれているか
- 仲介手数料が家賃の何倍で、消費税を含めた額か
- 保証会社の名前と保証料、更新のときにかかる費用
- 火災保険の保険期間と、指定以外の保険を選べるか
- 鍵交換や清掃など、名目のある費用の中身
- 加入が任意のサービスが入っていないか
契約の前には、宅地建物取引士による重要事項説明があります。家賃以外にやりとりするお金の額と目的は、この説明の中で示すことが法律で決められています。見積もりと食い違いがないかを、ここでも照らし合わせてください。
月数ではなく、1行ずつの中身で見る。
申し込む部屋を決める段階では、「家賃の◯か月分」より項目ごとの金額で比べるほうが確実です。分からない項目があれば、「これは何のお金ですか」と聞いてください。中身が分かれば、払うべきお金と相談できるお金の区別がつきます。
よくある質問
敷金は、退去のときに戻りますか?
未払い分などを差し引いた残りが返ります。
仲介手数料は、いくらまでですか?
借りる人の分は、承諾がなければ家賃の0.55倍以内です。
火災保険は、指定のものに入るしかありませんか?
物件によって違うので、見積もりの段階で聞いてみてください。



