更新するか引っ越すか、いつまでに決めればいい?
山内 祐人
更新の案内が届くと、住み続けるか迷いますよね。決める期限と、2年分で比べる計算のしかたを書きました。
お客様
更新料の案内を見て、このまま住むか引っ越すかで迷っています。
ご相談の中で、こうしたお話を伺うことがあります。一般的な賃貸の「普通借家契約」は、期間が終わっても借りる人が望めば続けて住める契約で、そのための手続きが更新です。住んで2年近くたつと、管理会社から更新の案内が届くことがあります。
ただ、案内が届いてから考え始めると、思ったより時間がありません。引っ越すなら、今の部屋の解約を前もって伝える必要があるからです。その期限は、案内が届く前に来ていることさえあります。決める期限は、案内ではなく解約を伝える期限です。
この記事では、更新にかかるお金と決める期限、2年分の費用の比べ方をまとめました。定期借家の違いと、更新時の家賃の相談にも触れます。
更新のときは、何にお金がかかるの?
担当・山内
更新料のほかに、事務手数料や保険・保証会社の更新料がかかることがあります。
更新のときにかかる可能性があるお金は、次のとおりです。どれがかかるか、いくらかは契約によって違います。
- 更新料(貸主に払うお金。無い契約もある)
- 更新事務手数料(管理会社などに払う手数料)
- 火災保険の更新料(保険の期間が切れる場合)
- 家賃保証会社の更新料(保証会社を使っている場合)
案内の合計額だけでなく内訳まで見ておくと、引っ越しの費用と比べやすくなります。更新料が「新家賃の1か月分」のように、家賃を基準に決まっている契約もあります。
更新料の有無は、地域による違いも大きいものです。国交省の2007年の調査では、更新料を取っている割合は神奈川で約9割、大阪と兵庫では0%でした。古い調査なので今の割合とは違うかもしれませんが、地域で慣習が違うことは分かります。
自分の場合を知るには、契約書の「更新」の条文と、入居時に入った保険や保証会社の書類を見てください。管理会社に「更新のときにかかる費用を、項目ごとに教えてください」と聞けば確かめられます。
更新の案内を待っていても、間に合うの?
担当・山内
解約予告の期限が案内より先に来ることもあるので、待たずに確かめます。
解約予告の期限とは、今の部屋の解約を何日前までに貸主へ伝えるかの期限で、それぞれの契約で決められています。国の賃貸住宅標準契約書(契約書のひな型)では、借りる人からの解約は30日前の申し入れとしています。
ただし、2か月前や3か月前とする契約もあります。一方で、更新の案内がいつ届くかに法律の決まりはなく、管理会社によって違います。そのため、案内が届いた時点で解約予告の期限がすぐそこということもあるのです。
お客様
案内が届いてから契約書を見たら、解約予告は2か月前でした。もう遅いでしょうか?
担当・山内
焦りますよね。私なら、まず満了日と解約予告の期限を並べて見ます。
お客様
並べてみます。引っ越すとしたら、ほかに何を考えておけばいいですか?
担当・山内
次の部屋の申し込みと審査にも日数がかかります。期限の日をカレンダーに書いて、そこから逆に数えてみてください。
期限を過ぎてから引っ越しを決めると、選べる道が狭くなります。次の部屋と今の部屋の家賃を、しばらく二重に払うことになるかもしれません。いったん更新してから退去する場合、払った更新料が戻るかどうかは契約次第です。
そこで、契約満了日と解約予告の期限は、案内を待たずに自分で確かめておきましょう。契約期間は2年とは限らないので、満了日は契約書の「契約期間」の欄で見ます。満了日の半年前に契約書を開き、期限の日付をカレンダーに書き込んでおくと安心です。
更新と引っ越し、どちらが安く済むの?
担当・山内
更新料だけで比べず、次の2年間に出ていくお金の合計で比べます。
私は、2年間の支払いの合計で比べると判断がぶれにくいと見ています。以下の金額は、計算のしかたを示すための仮の数字です。
更新する場合は、更新料と更新事務手数料、保険と保証会社の更新料を足します。たとえば家賃8万円で、更新料8万円、手数料2万円、保険2万円、保証会社1万円なら13万円です。これに今の家賃の2年分が加わります。
引っ越す場合は、新しい部屋の初期費用と引っ越し代、今の部屋の退去費用を足します。仮に初期費用40万円、引っ越し代8万円、退去費用3万円なら51万円です。これに新しい部屋の家賃の2年分が加わります。
| 項目 | 更新する(例) | 引っ越す(例) |
|---|---|---|
| 最初にかかるお金 | 13万円 | 51万円 |
| 家賃(2年分) | 8万円×24か月=192万円 | 7.5万円×24か月=180万円 |
| 合計 | 205万円 | 231万円 |
この例では、家賃が月5,000円下がっても、2年で見ると更新したほうが26万円少なく済みます。家賃の差が大きい場合や、長く住むつもりの場合は結果が変わります。退去費用は部屋の傷み具合と契約で決まるので、国交省の原状回復ガイドラインにも目を通しておいてください。
また、更新の時期は家賃について話せるきっかけにもなります。書類にサインする前なら、条件を話し合う余地も残っています。
お客様
更新のついでに、家賃を見直してもらえないか聞いてみたいんです。失礼になりませんか?
担当・山内
気が引けますよね。法律でも、近くの似た部屋と比べて家賃が合わなくなったときは、見直しを求められるとされています。
お客様
そうなんですね。でも、聞けば下がるものなんですか?
担当・山内
必ず下がるわけではありません。周りの募集家賃を調べてから、穏やかに尋ねてみてください。
聞くなら「近くの同じような部屋と比べて、見直していただく余地はありますか」くらいで十分です。
満了日が春なら、早めに動いたほうがいい?
担当・山内
春は動く人が一年でいちばん多いので、秋から冬のうちに動き方を決めます。
進学や就職、転勤が重なる春は、住まいを移す人が一年でいちばん多くなります。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」で、2025年に都道府県をまたいで移った人の数を月別に見ると次のとおりです。
| 月 | 移動者数 | 月 | 移動者数 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 149,033人 | 7月 | 182,864人 |
| 2月 | 161,521人 | 8月 | 161,506人 |
| 3月 | 518,532人 | 9月 | 170,662人 |
| 4月 | 368,109人 | 10月 | 168,057人 |
| 5月 | 179,005人 | 11月 | 132,683人 |
| 6月 | 171,209人 | 12月 | 152,550人 |
2025年の3月は51万8,532人で、4月を除くほかの月が13万〜18万人台なのに比べて際立っています。国土交通省も、3月から4月にかけて引越しの依頼が集中するとして、毎年時期をずらすよう呼びかけています。
人が多く動く時期は、空く部屋が増える一方で、部屋を探す人も増えます。気に入った部屋がすぐ埋まったり、引越し業者の予約が取りにくくなったりしやすい時期です。満了日が春なら、混む前に決めておくと慌てずに済みます。
定期借家だと、何が違うの?
担当・山内
更新がないので、住み続けるには貸主と合意して再契約を結びます。
ここまでは普通借家契約の話です。契約書に「定期建物賃貸借」や「定期借家」と書かれていたら、話が変わります。定期借家契約には更新がなく、期間が終われば契約も終わります。引き続き住むには、貸主と合意して新しく契約を結び直す「再契約」が必要です。
再契約できるかどうかは、貸主の考え次第です。期間が1年以上の定期借家では、貸主は満了の1年前から6か月前までに、契約が終わることを知らせる決まりがあります。その知らせが届いたら、再契約の可否と条件を早めに聞いておきましょう。
途中で解約したい場合も、契約書を見ておきます。床面積200㎡未満の住まいで、転勤や療養などやむを得ない事情があれば、借りる人から解約を申し入れられます。その場合、申し入れから1か月で契約が終わると法律で定められています。契約書に別の中途解約の定めがあるかも、あわせて見てください。
決める期限は、案内より先に来る。
更新か引っ越しかを決めるのに必要なのは、満了日、解約予告の期限、更新にかかるお金の3つです。どれも契約書と手元の書類で分かります。案内が届くのを待たず、半年前に一度だけ契約書を開いてみてください。
よくある質問
更新の案内は、いつ届きますか?
法律の決まりはなく、管理会社によって違います。満了日の半年前に、契約書で日付を確かめておくと安心です。
更新料は、どの部屋でもかかりますか?
かからない契約もあります。契約書の「更新」の条文で確かめられます。
定期借家でも、更新できますか?
できません。住み続けるには、貸主と合意して再契約を結ぶ必要があります。



