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開業資金は、物件のお金のほかに何がかかる?

費用と契約 約7分で読めます

おせっかい度 まぁまぁ、おせっかい

山内 祐人

家賃が払えそうだと、ほっとしますよね。私は、その先の数か月まで見込むお金の分け方と相談先を書きました。

目次
  1. 開業資金は、何に分けて考えればいいの?
  2. 物件を借りるお金は、住まいと何が違うの?
  3. 契約してから開業するまでの家賃も、かかるの?
  4. 実際に開業した人は、いくら使ったの?
  5. お金の相談は、どこにすればいい?
  6. よくある質問

お客様

家賃と保証金は払えそうなので、カフェを開くお金は足りると思っていました。

開業のご相談で、こうしたお話を伺うことがあります。

物件を探し始めると、まず目に入るのは募集図面の家賃と保証金です。けれども、開業に必要なお金は物件を借りるお金だけではありません。内装の工事や厨房機器・机などの備品、オープン前の広告にもお金がかかります。売上が安定するまでの家賃や人件費も、物件の契約より前に見込んでおく必要があります。

この記事では、開業に必要なお金の全体像と、実際に開業した人がいくら使ったのかを見ていきます。お金の相談先もまとめました。

開業資金は、何に分けて考えればいいの?

担当・山内

最初に一度払う「設備資金」と、毎月出ていく「運転資金」の2つに分けると整理できます。

設備資金は、お店や事務所を形にするために最初に一度払うお金です。物件の保証金、内装工事、機械や家具の購入がここに入ります。日本政策金融公庫の創業計画書の様式も、この分け方で書くようになっています。

運転資金は、営業を続けるために毎月出ていくお金です。家賃、人件費、材料や商品の仕入れ代などが入ります。住まいなら毎月の出費は家賃と生活費くらいですが、お店は売上が少ない時期にも支払いが続きます。

駅の近くで小さなカフェを開く場合を例に、2つの箱に分けてみます。

区分 中身 カフェの例
設備資金 物件の取得、内装工事、設備・備品 保証金、内装、コーヒーマシン、テーブル
運転資金 家賃、人件費、仕入れ、広告 毎月の家賃、アルバイト代、豆やミルク

物件を借りるお金は、住まいと何が違うの?

担当・山内

仲介手数料の決まりと家賃の消費税が違い、図面の家賃より多く払うことがあります。

物件を借りるときに払うのは、保証金・礼金・仲介手数料・前家賃などです。保証金は、住まいの敷金にあたる預けるお金です。何か月分かは物件と契約で違い、返すときに一部を差し引く契約もあります。返還の条件は契約書で確かめてください。

さらに住まいと違うのが仲介手数料で、上限は貸主と借主から受け取る合計で家賃1か月分に消費税を足した額です。住まいでは、借主の承諾がなければ借主の負担は半月分までと決まっています。店舗や事務所にはこの決まりがないので、借主が1か月分を払う契約もあります。

また、住まいの家賃は、消費税がかからない取引とされています。店舗や事務所の家賃は、この扱いの対象に入りません。募集図面の家賃が税抜きなら、実際に払う額はそれより多くなります。見積もりが税込みかどうかは、担当者に確かめておきましょう。

物件のお金のほかに、設備資金には内装工事や備品の費用も加わります。前の店の設備を引き継ぐ居抜き物件でも、すべてがそのまま使えるとは限りません。工事の見積もりは、物件の候補が決まった段階で早めに取っておくと、全体がつかめます。

契約してから開業するまでの家賃も、かかるの?

担当・山内

家賃は、お店を開けた日ではなく、契約で決めた日からかかります。

住まいなら契約してすぐ住み始められますが、お店は契約してから準備が始まります。契約のあとに内装工事を行い、業種によっては保健所などの手続きも進めます。そのため、売上がまだない期間の家賃は、まるごと開業資金から出すことになります。

たとえば、内装工事で2か月かかれば、開業前に2か月分の家賃を払います。工事が延びれば、その分も家賃が増えます。

この期間の家賃を軽くする方法に、フリーレント(一定の期間、家賃を無料にする取り決め)があります。ただし、どの物件にもついているわけではなく、貸主との交渉次第です。

お客様

工事の間も家賃がかかるなんて…。フリーレントは付けてもらえるんでしょうか?

担当・山内

売上のない時期なので、気になりますよね。付くかどうかは、貸主さんとの交渉次第なんです。

お客様

頼むだけ頼んでみても、いいんですか?

担当・山内

はい。「家賃はいつから発生しますか」「工事の期間のフリーレントは相談できますか」と聞いてみてください。

家賃のほかに、開業前に出ていくお金も書き出しておきましょう。チラシやホームページなどの広告費、最初の仕入れ代、開業前に雇うスタッフの研修中の給料などです。どれも物件の見積もりには載らないので、自分で拾っておきます。

実際に開業した人は、いくら使ったの?

担当・山内

2025年度の調査では、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。

日本政策金融公庫の総合研究所は、毎年「新規開業実態調査」を行っています。中央値とは、金額の順に並べたときに真ん中にくる人の金額です。一部の高額な開業に引っぱられにくいので、私はこちらを目安に見ています。

分布を見ると、500万円未満が4割あまりを占める一方で、1,000万円以上の人も3割近くいます。業種や規模で、必要なお金は大きく違うのです。

開業費用の分布(2025年度)

(%)

項目値
250万円未満20.1
250〜500万円21.7
500〜1,000万円29.7
1,000〜2,000万円18.5
2,000万円以上10

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」

  • 対象は、公庫が融資した開業後1年以内の企業(不動産賃貸業を除く)で、回答は2,165社です
  • 「250〜500万円」は、250万円以上500万円未満の意味です(ほかの区分も同じ)

開業時に集めたお金は平均1,219万円で、その7割近くが金融機関などからの借り入れでした。同じ調査で、開業時に苦労したことの1位は「資金繰り、資金調達」で、56.9%の人が挙げています。お金の準備は、多くの開業者がつまずく場所です。

開業時の資金調達額の内訳(平均)
項目値
金融機関等からの借り入れ827
自己資金279
配偶者・親・兄弟・親戚53
友人・知人等41
その他19

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」

お金の相談は、どこにすればいい?

担当・山内

日本政策金融公庫や自治体の窓口に、物件を決める前から相談できます。

日本政策金融公庫には、これから事業を始める人や、開業しておおむね7年以内の人に向けた融資の制度があります。設備資金と運転資金の両方に使え、相談は近くの支店で受け付けています。

都道府県や市区町村には、制度融資(自治体が金融機関と組み、借りやすい条件を整えた融資)があります。金利の一部を自治体が負担するなど、条件は自治体ごとに違います。窓口は産業振興や商工の担当課で、取り扱う金融機関に先に話をしておく進め方もあります。

制度融資の多くは、信用保証協会(借りる人の保証人のような役割をする公的な機関)の保証を使うのが条件です。その場合は、金利のほかに保証料がかかります。保証料の一部を補助する制度もあるので、窓口で聞いてみてください。

市区町村の多くは、商工会議所などと組んで創業の相談窓口や創業セミナーを開いています。融資の申し込みには事業計画が必要なので、計画づくりから相談できます。美容室を開くなら、内装と設備の見積もりを持って行くと話が具体的に進みます。

お客様

物件が決まってから、融資の相談に行こうと思っていました。

担当・山内

その順番で考えますよね。ただ、物件のお金が分からないと、必要な金額を答えにくいんです。

お客様

たしかに…。何をそろえてから行けばいいですか?

担当・山内

物件の申し込みの前に、契約時に払うお金の明細などを書面でもらっておいてください。

書面でもらっておきたいのは、次の3つです。

  • 契約時に払うお金の明細(保証金・礼金・仲介手数料・前家賃)
  • 家賃が発生する日と、フリーレントの有無
  • 保証金を返すときの条件

この3つがそろうと、物件のお金が開業資金の中でどれだけを占めるかが見えてきます。家賃が払えるかだけでなく、開業してからの数か月を乗り切れるかまで見えてから物件を決めても、遅くはありません。

開いてからの数か月まで、数えてから決める。

よくある質問

開業資金は、いくらくらい用意すればいいですか?

業種や規模によって大きく違います。公庫の2025年度の調査では、開業費用の中央値は600万円でした。

内装工事の期間の家賃も、払う必要がありますか?

家賃は契約で決めた日からかかるので、工事の期間も払います。

融資の相談は、物件が決まってからでいいですか?

物件を決める前から始められます。契約時に払うお金の明細があると、必要な金額を答えやすくなります。