住みたい街の治安は、どうやって調べればいい?
八木澤 竜也
知らない街の夜道は、歩いてみるまで不安ですよね。警察の地図と、自分の目で確かめる方法を書きました。
お客様
このあたりは治安が悪いと聞いたんですが、本当でしょうか。
部屋探しのご相談の中で、こうしたお話を伺うことがあります。毎日帰ってくる場所なので、安心して暮らせるかどうかは家賃と同じくらい大事な条件です。
ただ、この記事では、どの街が良い、悪いという話はしません。治安の良しあしを一言で決める根拠は示しにくく、そこで暮らしている人を傷つけることにもなるからです。
そのかわり、気になる街を自分で確かめる方法をお伝えします。使うのは、警察が公開している地図と情報、それから自分の足と目です。どれも無料で、内見の前後に少し時間をとればできます。
口コミや評判は、どこまで信じていいの?
担当・八木澤
口コミは「何を確かめればいいか」のヒントとして読み、判断は別の材料でします。
ネットの口コミや掲示板には、住んでいる人の実感が書かれていることがあります。一方で、いつ、誰が、どんな体験をもとに書いたのかは分かりません。何年も前の出来事や一度きりの体験が、今も続いているように読めてしまうこともあります。
「住みやすい街」「住みたくない街」といったランキングも同じです。何を基準に順位をつけたのかは、記事によってまちまちです。駅前のにぎやかさを良いと見るか、騒がしいと見るかでも、評価は逆になります。
たとえば「夜道が暗い」という書き込みを見たら、本当に暗いかを自分で歩いて確かめる。そうした使い方なら、口コミも役に立ちます。
警察の地図や防犯メールで、何が分かるの?
担当・八木澤
地図ではどこで何が起きたかが、防犯メールではいま起きていることが分かります。
各地の警察は、犯罪の発生状況を地図や統計で公開しています。東京なら警視庁の「犯罪情報マップ」があり、侵入窃盗やひったくり、自転車盗など、罪種を選んで地図に表示できます。子どもや女性への声かけ・つきまといといった、事件の前触れにあたる情報も載っています。
ほかの府県警にも、同じような地図があります。大阪府警は防犯アプリ「安まちアプリ」の中で、地域の犯罪発生状況を地図で見られるようにしています。探している地域の警察本部のサイトで、「犯罪情報マップ」「防犯マップ」と探してみてください。
警視庁は、町丁目ごとの罪種別・手口別の件数も、表計算ソフトで開けるファイルで公開しています。気になった場所の件数を、年ごとに見比べることもできます。ただ、数字を読むときは次の点に気をつけてください。
- 件数は、住んでいる人の数で割った数字ではありません
- 駅前や繁華街のように人が集まる場所は、住民以外が関わった件数も入ります
- 地図の点は、発生した場所そのものではなく付近を示すことがあります
- すべての事件が地図に載るわけではありません
件数が多い場所が、そのまま「住むと危ない場所」とは限らないということです。逆に、件数が少ないから何をしても安心、ということでもありません。地図は、どんな犯罪がどのあたりで起きているかをつかみ、自分の目で確かめる場所を決めるために使います。
地図で分かるのは、すでに起きたことです。いま起きていることは、警察の防犯メールやアプリで知ることができます。たとえば警視庁の「メールけいしちょう」は、受け取る地域を警察署ごとに選べます。不審者の情報や、ひったくりなどの発生情報が届きます。
おすすめは、引っ越してからではなく、候補の街が決まった段階で登録しておくことです。2〜3週間受け取ってみると、どんな種類の情報がよく届く地域なのかが見えてきます。物件を決める前の判断材料として使えます。
ただし、警視庁は、発生した犯罪がすべて配信されるわけではないと案内しています。届かないから何も起きていない、とは読まないでください。大阪府警のように、メールの配信を終えてアプリに一本化した例もあります。登録の方法は、各警察本部のサイトで確かめてください。
夜の帰り道は、どう確かめればいい?
担当・八木澤
ふだん帰宅する曜日と時間帯に合わせて、駅から部屋まで歩いてみます。
地図とメールで全体をつかんだら、次は自分の足です。内見はたいてい昼間ですが、仕事帰りに歩くのは夜の道です。
お客様
内見は昼に済ませたんですが、夜の帰り道がどんな感じか気になっていて…。
担当・八木澤
昼に見た道でも、夜は感じが変わりますよね。ふだん帰る時間に、駅から一度歩いてみてください。
お客様
歩くとしたら、どこを見ればいいですか?
担当・八木澤
僕なら、明るさと人の気配、それに逃げ込める場所があるかを見ます。
歩くときに見たいのは、次のような点です。
- 道を照らす明かりが、途切れずに続いているか
- 遅い時間でも、同じ方向へ歩く人や車があるか
- コンビニやスーパーなど、夜遅くまで開いている店が途中にあるか
- 駐車場の陰や高い塀の続く道など、見通しの悪い場所がないか
- 近くに交番があるか、どのくらいの距離か
いちばん近い道が、いちばん安心な道とは限りません。少し遠回りでも明るい大通りを選べるかどうか、別の道順もためしてみてください。同じ道でも、平日と週末の夜とで、人通りや雰囲気が変わる場所もあります。
建物の防犯は、どこを見ればいいの?
担当・八木澤
オートロックの先にある玄関の鍵と窓の部品、インターホンのモニターを見ます。
街の様子と同じくらい大事なのが、建物そのものの備えです。なかでも玄関の鍵を見る理由は、侵入の手口に表れています。警察庁の統計では、令和7年の住宅を対象にした侵入窃盗は1万7,152件でした。下の図は、4階建以上の共同住宅で使われた侵入の手口を、多い順に並べたものです。
- 4階建以上の共同住宅で、令和7年に認知された侵入窃盗1,588件の内訳です
- 3階建以下では、無締り47.4%、ガラス破り18.5%、合かぎ12.9%でした
階数にかかわらず、一番多いのは鍵がかかっていなかった「無締り」です。4階建以上では、合かぎによる侵入も約4分の1を占めます。侵入口は、4階建以上の65.4%が表の出入口でした。
お客様
オートロックがあるなら、玄関の鍵はそこまで気にしなくていいですよね?
担当・八木澤
そう思いますよね。でも4階建以上でも、一番多い手口は鍵がかかっていない「無締り」なんです。
お客様
えっ、ゴミ出しくらいなら開けたままにしていました…。
担当・八木澤
短い外出でも、鍵をかけるのを習慣にしてください。部屋を最後に守るのは、自分の玄関の鍵です。
鍵の次は、玄関ドアや窓の部品です。目印は「CPマーク」です。警察庁や国土交通省などの官民合同会議は、侵入に5分以上かかることなどを基準に部品を試験しています。合格した部品は目録に載り、このマークを付けられます。令和8年3月末現在、目録には17種類3,545品目が載っています。
警察庁のサイトでは、侵入に5分かかると約7割の侵入者があきらめるという資料も紹介されています。ドアの鍵がひとつだけなら、補助錠を足すのもひとつの方法です。ただ、ドアや窓枠に穴を開けるものは、取り付ける前に管理会社の了承をもらってください。
インターホンにモニターが付いているかも確かめましょう。警察庁は、侵入者が留守を確かめる方法として、インターホンで呼んでみるやり方が最も多いと紹介しています。相手の顔を見てから応じられれば、知らない人にドアを開けずに済みます。
建物の設備や鍵のことは、外から見ても分からない部分が多いものです。気になったことは、遠慮せずに仲介の担当者に聞いてください。聞き方の例です。
- 前の入居者が出たあと、玄関の鍵は交換されますか
- この建物の玄関や窓に、CPマークの付いた部品は使われていますか
- 補助錠を付けたいのですが、どんな種類なら認めてもらえるでしょう
その場で分からなくても、管理会社に確かめてもらえます。
評判より、地図と自分の足で。
治安は、誰かの評判で決めるものではありません。地図で起きたことを知り、メールでいまを知り、自分の目で帰り道と建物を確かめる。その順番で見ていけば、納得して住む街を選べます。
よくある質問
犯罪の件数が少ない街なら、安心ですか?
そうとは限りません。すべての事件が地図に載るわけではありません。
防犯メールは、いつ登録すればいいですか?
候補の街が決まった段階がおすすめです。住む前から、判断材料として使えます。
補助錠は、自分で付けてもいいですか?
ドアや窓枠に穴を開けるものは、取り付ける前に管理会社の了承をもらってください。



