借りたい物件で営業できるか、どう確かめる?
渡邉 拓也
契約してから「ここでは開けない」と分かるのが、いちばん悔しいパターンです。確かめる窓口と順番を書きました。
目次
お客様
気に入った物件だったのに、そもそもお店を開けない地域だと言われました。
お店の物件さがしのご相談で、こうしたお話を伺うことがあります。住まいなら、気に入った部屋に「住めるかどうか」で迷うことはほとんどありません。一方でお店や事務所は、場所や建物によって開きたい商売ができないことがあります。
困るのは、それが契約のあとで分かる場合です。内装の工事を頼んでから保健所で基準に合わないと言われたり、住宅街の物件がそもそも店を開けない地域だったりします。どれも、契約の前に確かめておけば防げます。
この記事では、役所の窓口・保健所・消防署・貸主と、確かめる相手を順に説明します。
その場所で、開きたいお店を開けるの?
担当・渡邉
土地の「用途地域」で開ける店の種類が決まるので、まずそこを確かめます。
用途地域とは、その土地に建ててよい建物の種類を、地域ごとに決めた区分です。都市計画法にもとづき、住宅向け・商業向け・工業向けなど13種類に分かれています。
静かな住宅街に多い「第一種低層住居専用地域」は、低い住宅のための地域です。国土交通省の説明では、建てられるのは小さなお店や事務所をかねた住宅などに限られます。一方で「商業地域」は、飲食店や百貨店などが集まる地域とされています。
一戸建てを借りてカフェにしたくても、地域によっては難しいことがあります。住まいでは気にしない点なので、見落とされやすいところです。募集図面に用途地域が書かれていれば、まずそこを見てください。
自分で調べるなら、市区町村の都市計画の情報を見ます。多くの自治体が、用途地域を色分けした地図をホームページで公開しています。東京都中央区のように、地図は参考図で、正確な確認は窓口でと案内している自治体もあります。
お客様
住宅街の一戸建てで、カフェをやりたいんです。図面に用途地域が書いてなくて…。
担当・渡邉
不安ですよね。結論から言うと、窓口への電話がいちばん確実です。
お客様
ホームページの地図だけでは足りませんか?
担当・渡邉
地図で当たりをつけたら、窓口に「この住所で、カフェを開くことはできますか」と聞いてください。
電話の相手は、市区町村の都市計画の担当窓口です。住所と業種をそのまま伝えれば話が通じます。
事務所だったフロアを、お店に変えられるの?
担当・渡邉
使い道を変える「用途変更」になり、広さしだいで役所の審査が要ります。
建物は、建てたときに住宅・事務所・店舗などの使い道が決まっています。この使い道を別のものに変えることを「用途変更」と呼びます。もとは事務所だったフロアを借りて、飲食店を開く場合がこれに当たります。
建築基準法では、飲食店は火事のときの避難などに特に気を配る建物として扱われます。そのため、安全の基準が事務所とは違います。
用途変更の手続きの線引きは、2019年6月25日に施行された建築基準法の改正で変わりました。飲食店などに変える部分の床面積が200㎡以下なら、建築確認という役所の審査は不要です。200㎡を超えれば、これまでどおり審査が要ります。
ただし国土交通省は、審査が要らなくても法律の基準に合わせる必要はあると案内しています。小さなカフェだから何もしなくてよい、ということではありません。広めの物件なら、用途を変える必要があるかを物件の担当者と設計を頼む建築士に聞いてください。
飲食店は、いつ保健所に相談すればいい?
担当・渡邉
内装工事を始める前に、平面図などを持って保健所に相談します。
工事の前に相談するのは、店のつくりに細かな基準があるからです。飲食店を開くには、食品衛生法にもとづく営業許可が要ります。許可は都道府県などが出すもので、窓口はお店の場所を受け持つ保健所です。施設の基準は、国の基準を参考に自治体ごとの条例で決められています。
施設の基準とは、手洗い場の数や位置、調理場の床や壁のつくりなどの決まりです。手を洗う設備をどこに置くかは、内装工事のやり直しにつながりやすい点です。自治体ごとに細かく違うので、ほかの地域の例をそのまま当てはめないでください。
相談の時期について、東京都中央区は、工事を始める前に平面図などを持って相談するよう案内しています。そのあと完成予定日の約10日前までに申請し、保健所の検査を受けてから許可が出る流れです。申請の時期の目安は、自治体ごとに違います。
お客様
来週から内装工事に入れるそうです。保健所への相談は、そのあとでいいですか?
担当・渡邉
早く開けたいですよね。ただ、保健所には工事の前に相談するのが順番です。
お客様
危なかったです。何を持って行けばいいですか?
担当・渡邉
業者さんの平面図を持って、保健所へ行ってください。
飲食店以外にも、開く前に届出が要る業種があります。美容室は美容師法にもとづき、あらかじめ保健所に美容所の開設届を出します。そのうえで設備の検査を受け、確認が済むまでは店を使えません。自分の業種に何が要るかは、保健所に聞けば教えてもらえます。
消防署には、何を届け出ればいい?
担当・渡邉
使い始める前に「防火対象物使用開始届」が要ることがあり、置く設備も変わります。
もう1つの窓口が消防署です。建物の一部を借りて新しく使うときは、「防火対象物使用開始届」が要ることがあります。その場所をどんな用途で、どう使うかを消防署に知らせる書類です。
東京消防庁は、使い始める7日前までに、管轄の消防署に届け出るよう案内しています。工事をしない場合でも、新たに使うなら届出が必要とされています。期限や書き方は地域の消防本部によって違うので、物件の住所を受け持つ消防署に確かめてください。
業種や広さによって、置かなければならない設備も変わります。飲食店は2019年10月から、火を使う設備があれば広さにかかわらず原則として消火器が必要になりました。どんな設備が要るかは、図面を持って消防署の予防課に相談すると具体的に教えてもらえます。
貸主には、何を確かめておけばいい?
担当・渡邉
その業種で使ってよいかと、看板・におい・音・営業時間の決まりを確かめます。
役所の決まりをクリアしても、貸主がその業種で使うことを認めるかは別の話です。民法では、借りた人は契約で決めた使い方に従って使うことになっています。決めた使い方に反すると、契約を解除される理由になりえます。
契約書の使用目的に「事務所」とだけあれば、飲食店として使うことはできません。住まいなら「住居」で済みますが、店舗では業種の違いが問題になります。「カフェ」「美容室」のように、自分の業種がはっきり書かれているかを見てください。
建物には、その建物だけの決まりもあります。看板を出せる場所、料理のにおいを外に出すダクトの位置、音の大きさ、営業してよい時間などです。においの強い料理を出す店や夜遅くまで開ける店は、こうした決まりに合うかを先に聞いておきましょう。
物件の担当者には、「この物件で、夜11時までカフェを営業できますか。看板はどこに出せますか」と聞いてください。返事は口頭で済ませず、契約書や重要事項の説明に書いてもらうのが安心です。
ここまでを表にまとめました。物件を見に行く前と、申込みの前に見返してください。
| 確かめること | どこで・誰に |
|---|---|
| その地域で開ける業種か(用途地域) | 市区町村の都市計画の窓口、ホームページの地図 |
| 建物の用途を変える必要があるか | 物件の担当者、設計を頼む建築士、自治体の建築の窓口 |
| 営業許可や開設届の基準に合うか | お店の場所を受け持つ保健所(工事の前に図面で相談) |
| 消防署への届出と、要る設備 | 物件の住所を受け持つ消防署の予防課 |
| その業種で使ってよいか、看板・におい・音・営業時間 | 物件の担当者と貸主(契約書に書いてもらう) |
窓口には、物件の住所と業種、広さが分かる資料を用意して相談すると話が早く進みます。気になる物件があれば、申込みの前に一度電話してみてください。契約のあとに分かるより、契約の前に分かるほうが、ずっと小さな手間で済みます。
開ける場所かどうかは、契約の前に聞く。
よくある質問
用途地域は、どこで調べられますか?
多くの自治体がホームページで地図を公開しています。正確な確認は、窓口でするのが確実です。
200㎡以下なら、建物の手続きは気にしなくていいですか?
建築確認の審査は不要です。ただ、法律の基準には合わせる必要があると国土交通省は案内しています。
工事をしない場合も、消防署への届出は要りますか?
新たに使うなら必要と、東京消防庁は案内しています。



