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店舗の入居審査では、何を見られるの?

開業と物件さがし 約7分で読めます

おせっかい度 まぁまぁ、おせっかい

山内 祐人

何を聞かれるか分からないまま申し込むのは、不安ですよね。私は、貸主が見ている点と先にそろえる資料を書きました。

目次
  1. 店舗の申し込みは、住まいと何が違うの?
  2. 審査では、収入のほかに何を見られるの?
  3. どんな資料をそろえておけばいい?
  4. 保証人を頼むとき、何に気をつければいい?
  5. 内装工事と申込金は、いつ何を確かめればいい?
  6. よくある質問

お客様

開業前でまだ売上がないのに、店舗の審査に通るのか不安です。

店舗のご相談で、こうしたお話を伺うことがあります。

住まいの審査では、家賃を払い続けられる収入があるかが主に見られます。店舗や事務所では、それに加えて「どんな商売を、どんな資金で、どれくらい続けられそうか」も見られます。申し込みは、事業の計画を貸主に見せる場でもあるのです。

この記事では、申し込みの流れと貸主が気にする点、そろえておく資料、保証人と申込金の注意点をお伝えします。

店舗の申し込みは、住まいと何が違うの?

担当・山内

流れはほぼ同じですが、申し込みの段階で事業の説明や内装工事の相談が加わります。

段階ごとに並べると、次のとおりです。

段階 住まいと同じこと 店舗・事務所で加わりやすいこと
申し込み 申込書と本人確認書類を出す 業態の説明、事業計画の要点、内装の希望を伝える
審査 貸主・管理会社・保証会社が確かめる 業種、ほかの入居者との相性、資金の見通しも見られる
契約 重要事項の説明を受けて署名する 使い方や工事についての取り決めを確かめる

かかる日数は物件や会社で違うので、申し込むときに目安を聞いてください。

契約の前には、宅地建物取引士(不動産取引の専門資格を持つ人)から重要事項の説明を受けます。不動産会社が仲介に入る取引なら、住まいでも店舗でもこの説明があります。建物の使い方の制限など、分からない点はその場で聞いてください。

審査では、収入のほかに何を見られるの?

担当・山内

これから始める事業の中身と、同じ建物のほかの入居者とうまくやっていけるかが見られます。

住まいの審査では勤め先や源泉徴収票で収入を確かめますが、店舗や事務所では事業そのものが判断の材料になります。たとえばカフェを開くなら、席数や営業時間、メニューの方向性、開業にかける資金などを聞かれることがあります。

事業の中身は、書類でも確かめられます。会社として借りる場合は、登記事項証明書(会社の名前や所在地、役員などを記した公的な証明書)がよく求められます。法務局の窓口のほか、郵送やオンラインでも請求できます。営業中の会社なら、決算の書類を求められる場合もあります。

個人事業なら、開業届(事業を始めたことを税務署に知らせる届出)の控えを求められることがあります。

お客様

まだ開業届を出していないんです。控えがないと、申し込めないでしょうか?

担当・山内

準備の途中だと気になりますよね。出していない事情は、そのまま伝えてください。

お客様

伝えたら、そのあとはどうすれば?

担当・山内

代わりに出せる書類を相談しましょう。事業計画の要点を書面にしておくのも手だと思います。

もう一つ見られるのが、建物の中でうまくやっていけるかです。資金の見通しとあわせて、次の点が気にされます。

  • においや煙、音がどれくらい出るか
  • お客さまや業者が出入りする人数と時間帯
  • 同じ建物に入っている店や会社との相性
  • 長く続けられるだけの資金の見通しがあるか

たとえば上の階に静かな事務所があるビルで焼き肉店を開くなら、においと煙の対策は聞かれやすい点です。美容室なら、薬剤のにおいや水をたくさん使うことが話題になります。聞かれる前に自分から対策を説明できると、話が進みやすくなります。

審査の基準は貸主や会社ごとに違い、公的な数値はありません。人から聞いた目安より、担当者に「この貸主さんは、どんな点を重く見ますか」と聞くほうが確かです。

どんな資料をそろえておけばいい?

担当・山内

事業計画の要点・業態の説明・内装のイメージ・資金計画の4つを書面にしておきます。

書面にしておくのは、口だけの説明では担当者から貸主へ正確に伝わりにくいからです。表の右の列は、カフェの場合の例です。

資料 書いておくこと カフェの場合の例
事業計画の要点 何を、誰に、どう売るか 近くの会社員向けに、昼はランチ、午後は軽食
業態の説明 営業時間、席数、においや音の出方 朝から夕方まで営業、揚げ物は出さない
内装のイメージ 工事の範囲、水道やガスの使い方 カウンターの新設、流し台の追加
資金計画 自己資金、借入れ、開業後の備え 開業の費用と、売上が安定するまでの家賃の備え

資金計画には、運転資金も入れておきましょう。運転資金とは、開業してから売上が安定するまでの家賃や仕入れに充てるお金です。この備えがあると、貸主は「すぐに家賃が止まる心配は少ない」と判断しやすくなります。

何から書くか迷う方は、日本政策金融公庫の「創業計画書」の様式が参考になります。公庫は国が全額出資する金融機関で、融資を申し込む人向けの様式ですが、誰でもダウンロードできます。

様式には、創業の動機、経営者の略歴、取り扱う商品やサービス、必要な資金と調達の方法、事業の見通しといった欄があります。洋風居酒屋や美容業、学習塾などの記入例も公開されています。

保証人を頼むとき、何に気をつければいい?

担当・山内

極度額を決めることと、事業用なら財産や収支などを保証人に伝えることです。

店舗や事務所でも、保証会社の利用を求められることがあります。保証会社とは、家賃が払えなくなったときに、代わりに貸主へ立て替える会社です。会社として借りる場合は、代表者個人が連帯保証人になるよう求められることもあります。

個人が連帯保証人になるときは、2020年4月に施行された改正民法のルールが当てはまります。家賃のように将来の金額が決まっていないものの保証では、責任の上限となる極度額を決めなければ、保証契約は無効です。住まいでも店舗でも変わりません。

さらに、事業用ならではの決まりもあります。事業のための支払いの保証を個人に頼むとき、頼む側は自分の財産や収支、ほかの借金の状況などを伝えなければなりません。法務省は、この決まりがテナント料の保証にも当てはまると説明しています。伝えなかったり、事実と違う説明をしたりすると、条件によっては保証人があとで契約を取り消せることがあります。

お客様

開業資金の一部を借りるので、保証人を頼む兄にどこまで話せばいいか迷っています。

担当・山内

身内だと言いにくいですよね。ただ事業用では、財産や借金の状況などを伝える決まりがあるんです。

お客様

借りている分まで、正直に見せたほうがいいんですね。

担当・山内

はい。資金計画と借入れの状況を見せたうえで、極度額がいくらかも契約書で一緒に確かめてもらいましょう。

内装工事と申込金は、いつ何を確かめればいい?

担当・山内

工事の希望は申し込みの段階で伝え、申込金を預けるときは預り証をもらいます。

工事の希望を早めに伝えるのは、建物が貸主のものだからです。壁や床、水道やガスの設備に手を入れる工事には、貸主の承諾が要ると契約で決められていることが多くあります。たとえば美容室でシャンプー台を増やすなら、水を引き込んで流す配管工事が要ります。契約してから「その工事は認められない」と言われると、計画そのものを見直すことになりかねません。

そこで担当者に「この工事は、貸主さんの承諾をもらえそうですか」と聞いてみましょう。退去のときに内装をどこまで戻すかも、工事の内容と結びつく話です。承諾をもらえたら、工事の範囲を書面に残しておくと安心です。

もう一つの申込金は、申し込みのときに預けるお金です。ただ、申し込みはまだ契約ではありません。仲介する不動産会社は、契約の前に申し込みを取りやめた人に、預かったお金の返還を拒むことが禁じられています。宅地建物取引業法の施行規則(法律を補う国の細かい規則)の決まりで、住まいと店舗の区別はありません。ただし、貸主と直接やりとりする場合は対象外です。

また住まいの契約では、消費者契約法(消費者を不利な契約から守る法律)が当てはまることがあります。しかし事業のために借りる人は、この法律でいう消費者に当たりません。そのため預り証をもらい、「やめたら全額戻りますか」「契約したら何に充てますか」と聞いておくと確実です。返事は、メールなど記録に残る形でもらいましょう。

申込書の向こうで、事業計画が読まれている。

よくある質問

開業届をまだ出していないと、申し込めませんか?

出していない事情を担当者に伝えて、代わりに出せる書類を相談してください。

会社で借りるときは、どんな書類が要りますか?

登記事項証明書がよく求められ、営業中の会社なら決算の書類を求められる場合もあります。

申込金は、取りやめたら戻りますか?

仲介する不動産会社は、契約の前に取りやめた人への返還を拒めません。預り証はかならずもらってください。