お店の前の人通りは、どうやって確かめればいい?
山内 祐人
人通りが多そうに見えても、本当にお客様になるのか気になりますよね。自分で数える手順と、公的なデータの使い方を書きました。
お客様
駅に近い大通り沿いなら、人通りは心配いらないですよね?
お店の場所さがしのご相談で、こうしたお話を伺うことがあります。駅に近い、大通りに面している、といった条件はたしかに目安になります。ただ、その物件の前を何人がいつ通るのかは、地図や募集図面からは分かりません。
この記事では、店の前を通る人の数(通行量)を、開業前に自分で数える方法をまとめました。特別な道具は要らず、スマートフォンとメモがあれば始められます。
あわせて、どんな人が通るかや、入りやすい流れかの見方も分かります。最後に、自治体の調査や国の人の流れのデータを、下調べにどう使うかも紹介します。
人通りは、なぜ自分で数えるの?
担当・山内
前を通る人がお客様の候補なので、印象ではなく数で比べておきます。
お店の場合、前を通る人がそのままお客様の候補です。カフェなら、通る人のうち何人かが立ち寄ってくれるかで売上が変わります。
住まいの部屋さがしでも人通りは確かめますが、見ているのは夜道が暗くないか、にぎやかすぎないかといった暮らしやすさです。お店では、「多そう」「少なそう」という印象ではなく、数で比べることに意味があります。
数で残しておくと、候補の物件が2つ3つあるときに同じ物差しで並べられます。印象は、見に行った日の天気や気分で変わりやすいものです。同じ手順で数えた記録があれば、あとから落ち着いて見比べられます。
いつ、どこに立って数えればいい?
担当・山内
平日と休日、朝・昼・夕方・夜に分け、立つ場所と方向を決めて数えます。
まず、数える日を平日と休日の両方に分けます。会社や学校のある日と無い日では、通る人がまるで違う場所もあるからです。時間帯も、朝・昼・夕方・夜に分けて数えておきましょう。
1時間ずっと数えるのは大変なので、15分だけ数えて4倍し、1時間あたりに直す方法があります。自治体の調査でも、決まった時間だけ数えて1時間に直すやり方が使われています。
ただし15分だと、電車が着いた直後か信号の変わり目かで、数が大きく揺れることがあります。気になるときは、同じ時間帯に15分を2回取って平均すると、ぶれが小さくなります。
お客様
平日の昼に1回見てきただけなんです。それで足りますか?
担当・山内
見に行かれたのは大きいです。ただ、平日と休日では通る人がまるで違う場所もあるんです。
お客様
1時間ずっと立つのは、正直きついです。
担当・山内
15分数えて4倍する方法があります。休日にも1回、数えてみてください。
さらに、上りと下りのように歩いていく方向も分けて記録します。駅へ向かう人と駅から帰る人では、立ち寄る気持ちも時間の余裕も違うからです。
立つ場所は、物件の真ん前の歩道か、道路の向かい側かを決めておきます。向かい側を歩く人は、横断歩道が近くに無ければ、店に来るまでに一手間かかります。候補の物件がいくつかあるなら、どこでも同じ条件で数えてください。記録表は、次のような形にしておくと迷いません。
| 曜日 | 時間帯 | 数えた時間 | 店側の歩道(方向A/方向B) | 向かい側の歩道 | 1時間に直した人数 | 天気・メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平日 | 朝 | 15分 | / | |||
| 平日 | 夜 | 15分 | / | |||
| 休日 | 昼 | 15分 | / |
天気や近くの行事の有無も、メモ欄に書いておきましょう。雨の日やお祭りの日は、ふだんと数が大きく変わることがあります。そうした日に当たったら、別の日にもう一度数えて見比べてください。
数えるときは、スマートフォンのカウンターアプリや、押すたびに数が増える数取器(かずとりき)を使うと楽です。方向ごとに分けたいときは、アプリを2つ並べるか、2人で手分けします。立つ場所は、歩く人や近くのお店の出入りの邪魔にならないところを選んでください。
人数のほかに、何を見ておけばいい?
担当・山内
どんな人が、どんな速さで歩いているかもメモします。
年齢層、会社員か買い物客か、ひとりか家族連れかを数えながら、ざっくりメモしておきます。正確な区分は要らず、「スーツの人が多い」程度で十分です。
歩く速さも見ておきましょう。駅へ急ぐ人は、どれだけ多くても店に寄る余裕がありません。反対に、ゆっくり歩いてお店をのぞいている人が多い通りは、数が少なめでも立ち寄りが期待できます。
たとえば平日の朝に会社員が速足で通る道は、持ち帰りのコーヒーなら合っても、ゆっくり座るカフェには向かないかもしれません。数と様子を組み合わせて、自分の店のお客様がそこにいるかを確かめてください。
業種によって、大事な時間帯も違います。カフェなら通勤前の朝、居酒屋なら仕事帰りの夜、美容室なら休日の日中が目安です。全部の時間帯を同じだけ数える必要はなく、自分の店が開いている時間を厚めに見ておきましょう。
夜に営業する店なら、暗くなってからの通りの様子も見ておきます。周りの店が早く閉まってシャッターが並ぶ通りは、昼間とは別の顔になります。街灯の明るさや、帰り道に通る人がどれくらい残っているかも、メモ欄に書き足してください。
お客様
居酒屋を考えている通りが、昼はにぎやかなんです。夜も同じだと思っていいですか?
担当・山内
期待しますよね。ただ、周りが早く閉まる通りは、夜に別の顔になります。
お客様
夜にも行ったほうがいいんですね。
担当・山内
仕事帰りの時間に、もう一度数えてみてください。
人が多ければ、入りやすいお店になるの?
担当・山内
多くても入りやすいとは限らず、足を止める場所と入口の見え方で変わります。
まず見るのは、通る人が自然に足を止める場所があるかどうかです。信号待ちの交差点の近くは、立ち止まった人が周りの店を見る時間が生まれます。
角の物件は、2つの方向から見える分だけ目に入りやすくなります。一方で入口の前に段差や階段があると、ベビーカーや車いすの方、荷物の多い方は入りにくくなります。2階や地下の物件なら、階段の入口が通りからどう見えるかも確かめてください。
入口の見えやすさは、少し離れたところから歩いて確かめます。50mほど手前から歩きながら、どこで看板や入口に気づけるかを見てください。両方の方向から試すと、街路樹や電柱、隣の看板で隠れていないかが分かります。
自治体の調査やデータは、どう使えばいい?
担当・山内
街全体の傾向をつかむ下調べに使い、物件の前は自分で数えます。
多くの自治体や商店街は、歩行者通行量調査(決まった地点で通る人を数えた調査)を行い、結果を公表しています。市のホームページで「通行量調査」と検索すると見つかることがあります。見つからないときは、市役所の商工担当の窓口や商工会議所に聞いてみてください。
ただ、調査地点は物件の前とは限らず、日付も年に1〜2日ということがあります。数える対象も、自転車を含むか、中学生以上かなど調査ごとに違います。
もっと広い範囲の人の流れは、国が公開しているデータでも見られます。地域経済分析システム(RESAS)は、地域のデータを地図やグラフで見られるサイトです。経済産業省と内閣官房が2015年に公開を始めました。人口や人の流れに関するメニューがあり、2025年に新しい仕組みに切り替わっています。
国土交通省も「全国の人流オープンデータ」として、1km四方ごとの滞在人口(その場所にいた人の数)を公開しています。平日と休日、昼と夜に分かれていますが、対象は2019〜2021年の月ごとの数字です。どちらも街の大まかな傾向を見る道具で、店の前の1本の道までは分かりません。
自分で数えた結果は、内見や申し込みの前に担当者へ見せてみてください。「この時間帯は、ほかの日も同じくらいですか」と聞くと、周りの事情を教えてもらえることがあります。
近くで工事をしている、向かいの大きな店が閉店予定だ、といった話は数えるだけでは分かりません。人通りは周りの変化で動くので、今の数とあわせて先の予定も聞いておくと安心です。
人通りは、地図ではなく足で数える。
開業してから「思っていた人通りと違った」と気づいても、場所はすぐには変えられません。平日と休日の2日あれば一通りの記録が取れるので、契約の前に確かめておきましょう。
よくある質問
15分だけ数えても、参考になりますか?
4倍すれば1時間あたりに直せます。揺れが気になるなら、同じ時間帯に2回取って平均します。
自治体の通行量調査があれば、自分で数えなくていいですか?
調査地点は物件の前とは限りません。街全体の傾向をつかむ材料にとどめてください。
何日くらい数えれば足りますか?
平日と休日の2日あれば、一通りの記録が取れます。



